「バス ペール エール 終 売」というワードで検索している人の多くは、あの赤い三角のロゴを懐かしく思い出しているのではないでしょうか。英国ビールの象徴ともいえるバスペールエールが、いつの間にか店頭から姿を消してしまった。いったい何が起きたのか。そしてもう一度飲める日は来るのか。この記事では、ブランドの歴史から終売の背景、そして復活の可能性までを丁寧に探っていきます。
英国ビールの象徴「バスペールエール」とは?
バスペールエール(Bass Pale Ale)は、イングランド中部のバートン・アポン・トレントという町で誕生した歴史あるペールエールです。創業は1777年。ウィリアム・バスが立ち上げた「バス醸造所(Bass Brewery)」は、19世紀には世界最大規模のブルワリーにまで成長しました。
象徴的なのが、ボトルに刻まれた赤い三角のロゴ。これは英国で最初に登録された商標のひとつで、いまでも多くのビールファンにとって特別な意味を持っています。香ばしいモルトの香りと、ほどよい苦味のバランス。派手さはないけれど、飽きのこない奥深さが魅力でした。
バスペールエールが消えたのはいつから?
日本で「終売」という言葉が広がり始めたのは2018年前後のこと。クラフトビール専門店などで「在庫限りで販売終了」という告知が出され、樽生を扱っていたバーでも「年内で最後の入荷」と伝えられました。これが実質的な国内終売のタイミングと見られています。
一方、イギリス本国でも流通量は減少傾向。かつて全国的に飲まれていたドラフト(樽生)・バスは、いまや中部地方の一部パブで細々と提供される地域ブランドになっています。世界的にも見かける機会は激減し、スーパーの棚からも姿を消しました。
なぜ名門ブランドが終売に?
バスペールエールの終売には、いくつもの要因が絡み合っています。単に「売れなくなった」だけではなく、グローバルなビール産業の再編や嗜好の変化が大きく影響しています。
1. 大手グループによるブランド再編
2000年、バス醸造所はベルギーの大手企業インターブリュー(現在のABインベブ)に買収されました。世界的にみても巨大なビールグループですが、買収後の主力はバドワイザーやステラ・アルトワなどの大量生産ブランド。伝統的なペールエールは優先順位が下がり、販促も縮小していきました。
結果として、バスは「クラシックではあるが販売量の少ないブランド」として扱われ、世界的な展開からは徐々に外されていったのです。
2. プロモーションと流通の衰退
ブランドを維持するには、広告・販促・流通網の維持が欠かせません。しかし、ABインベブはバスブランドを積極的に宣伝することはなく、醸造も契約生産に移行。イギリス国内でも「扱っているパブが少ない」「見かけない」という声が増えました。
日本では輸入代理店の取り扱いがなくなり、物流コストの上昇や在庫リスクも重なって、自然と市場から消えていったと考えられます。
3. クラフトビールの台頭と嗜好の変化
2010年代以降、クラフトビールが世界的にブームになりました。IPAやセゾン、ペールエールなど、多様で個性的な味が求められる時代に。クラシックな英国式ペールエールは「落ち着いた味わい」として一部ファンに愛されたものの、市場全体では存在感を失っていきました。
「懐かしい」「歴史的」ではあっても、マーケティング的には“新しさ”を打ち出せなかった。それが終売に拍車をかけたとも言えます。
日本での終売が意味するもの
日本市場での終売は、単なる輸入停止以上の意味を持っています。つまり「輸入元が今後の仕入れを断念した」ことを示しています。酒類は保存や輸送にコストがかかるため、一定の販売量が見込めなければ継続は難しいのです。
それでも、一部のビールバーや専門店では「在庫限り」として販売を続けたケースもありました。残っていた樽やボトルを開栓する際には、SNS上で「最後のバス」「これで飲み納め」という投稿も見られ、根強いファンの存在を感じさせました。
現在も飲める場所や入手ルートはある?
2025年現在、国内の通常流通でバスペールエールを見かけることはほとんどありません。ただし、輸入酒専門サイトや並行輸入業者で「限定入荷」や「海外在庫分」として販売されることがあります。そうした在庫も常に変動しており、入荷が止まれば再入手は難しいのが現実です。
また、イギリス現地のパブでは、いまも少量ながらドラフト・バスを提供しているところもあります。いわば“幻のリアルエール”として扱われており、現地で飲む体験は、ビール好きにとってひとつの憧れになっています。
復活の可能性はあるのか?
「もう一度あの味を」と願うファンは多く、復活を望む声は今も絶えません。実際、英国では一部で「Bass Ale is back」と題した復刻キャンペーンが行われたこともあります。ただし、その多くは限定醸造や特定地域のみでの販売に留まっています。
再販の鍵になるのは次の3点です。
- ブランドオーナー(ABインベブ)が再び戦略的に扱う意思を持つか
- 日本の輸入代理店がコストを負担してでも再導入するか
- 消費者側の需要が“クラシックビール”として再評価されるか
この3つがそろわなければ、本格的な復活は難しいでしょう。それでも、クラフトビールの世界では“伝統回帰”の流れもあるため、完全に望みが絶たれたわけではありません。
バスペールエールが遺したもの
終売となった今でも、バスペールエールは多くのビールファンに語り継がれています。赤い三角のロゴ、バートンの硬水が生み出す独特の味わい、そして“世界で初めて商標登録されたビール”という誇り。これらはすべて、ビール文化の歴史そのものです。
現代のクラフトビールシーンで、ペールエールやIPAが当たり前に楽しまれているのも、バスのような古典ブランドが礎を築いたからこそ。終売という出来事は残念ですが、その影響は確かに今も生きています。
バス ペール エール 終 売をめぐるこれから
バスペールエールの終売は、単なる「商品の消滅」ではなく、時代の移り変わりを象徴する出来事でもあります。大量生産とグローバル化の波の中で、クラシックなブランドがどう生き残るのか。そこに、ビール文化の未来が映し出されています。
もし再びあの味が帰ってくる日が来たら、きっと多くの人がグラスを掲げて「おかえり」と言うでしょう。それまでは、バスが残した歴史と香りを心の中で味わいながら、新たなビールの世界を楽しむのが、私たちにできる最高の“乾杯”なのかもしれません。

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