石川県のソウルフードとして親しまれてきた「とり野菜みそ」。冬になるとスーパーの鍋つゆコーナーに並ぶ定番商品でしたが、最近「店頭で見かけない」「売っていない」という声が増えています。長年ファンに愛されてきたあの味が、なぜ販売終了となってしまったのでしょうか。この記事では、販売停止の背景や再販の可能性を詳しく解説していきます。
石川県発祥の人気みそ「とり野菜みそ」とは
まずは、「とり野菜みそ」がどんな商品なのかを振り返ってみましょう。
製造元は、石川県かほく市に本社を構える株式会社まつや。実は「とり」という言葉は「鶏肉」の意味ではなく、「野菜をたっぷり“摂る”」という意味が込められています。もともとは北前船の船乗りが野菜不足を補うために使っていた味噌が原点で、江戸時代の頃から受け継がれてきた歴史ある調味みそです。
家庭では鍋料理のベースとして定番で、「とり野菜みそ」「ピリ辛とり野菜みそ」「ごまとり野菜みそ」「担々ごまとり野菜みそ」など、豊富なラインナップが展開されていました。近年は全国展開も進み、石川県以外でもスーパーや通販で手に入るようになっていました。
突然の販売終了…何が起きたのか?
そんな人気商品に「販売終了」の知らせが出たのは、2024年〜2025年にかけてのこと。まつやの公式サイトや加賀味噌食品工業協業組合の発表によると、複数の「とり野菜みそ」シリーズが販売を終了、もしくは取扱終了となっています。
特に話題になったのが、「とり野菜みそ鍋スープ」「ピリ辛とり野菜みそ鍋スープ」「胡椒鍋スープ」などの鍋つゆシリーズ。公式オンラインショップでは、「誠に勝手ながら販売を終了させていただくこととなりました」と告知され、在庫がなくなり次第販売を終了すると明記されていました。
さらに、加賀味噌組合は「とり野菜みそ」200gパック、ピリ辛、ごま、業務用20kg、詰め合わせなどの取り扱いを2022年末で終了したと発表。これにより、業務用ルートを中心に出荷が停止され、流通全体に影響が出たとみられます。
販売終了の理由は「諸般の事情」だけではない?
公式発表では「諸般の事情」としか説明されていませんが、その裏にはいくつかの要因が重なっていると考えられます。
1. 原材料価格とコストの高騰
食品業界全体で深刻なのが、原材料の値上がりです。大豆や米麹など、味噌づくりに欠かせない原料が世界的に高騰し、さらに円安や物流費・包装資材費の上昇も続いています。
「とり野菜みそ」はこだわりの味を守るために原料を厳選しており、価格転嫁が難しかったとみられます。生産コストが上がる一方で、希望小売価格を大きく上げることもできず、採算の取れないラインを整理せざるを得なかった可能性があります。
2. 業務用需要の減少
コロナ禍以降、飲食店や旅館などで使われていた業務用20kgサイズの需要が急減しました。大人数で鍋を囲む機会が減り、個食・小容量の需要が中心となったため、業務用商品を維持するメリットが薄れてしまったと考えられます。
3. 商品ラインの整理とブランド再編
「とり野菜みそ」は派生商品が多く、バリエーションも豊富でしたが、売上や生産効率の観点から整理が行われたとみられます。
実際、加賀味噌組合では「加賀みそ鍋のもと」という新ブランドを立ち上げています。これは“みそ屋が作る新定番”として2023年秋から販売されており、旧「とり野菜みそ」シリーズの後継的な位置づけともいえます。つまり、ブランドの刷新や再構築の一環として整理された可能性が高いのです。
4. 流通・販売体制の見直し
組合が「弊組合からの販売を終了」と明言していることから、卸売ルートや流通契約の変更も背景にあると考えられます。
まつやと協業していた複数の流通経路が再編され、結果的に市場から一時的に姿を消したという流れです。これにより、地域や店舗によっては「突然なくなった」と感じる事例も生じたようです。
「売ってない」声が相次ぐ理由
SNSや口コミサイトを見ても、「どこのスーパーにも置いていない」「通販でも在庫がない」といった投稿が増えています。
実際、販売終了の対象商品が多岐にわたっているため、特定の味やサイズが手に入らないケースが多いようです。
ただし、すべての商品が一斉に消えたわけではありません。現在も、まつやの公式オンラインショップでは一部ライン(ごまとり野菜みそや担々ごまとり野菜みそなど)が販売されています。また、Amazonや楽天市場では在庫限りで販売中の店舗も見られます。
「売っていない」という印象の背景には、主要流通ルートの縮小と在庫の地域差があるといえるでしょう。特に関東圏では取り扱いが減少している一方で、北陸地方ではまだ販売を続けている店舗もあります。
今後の再販や復活の見通しは?
多くのファンが気になるのが、「再販はあるのか?」という点です。
現時点では、メーカーから再開や復刻の予定について公式発表は出ていません。しかし、完全にブランドが消滅したわけではなく、まつやの公式サイトでは「とり野菜みそ」ブランドのページが継続して掲載されています。
また、後継商品とされる「加賀みそ鍋のもと」が登場していることから、今後はこのブランドを軸に新しい鍋文化を提案していく可能性もあります。もし需要が高まり、原材料コストが落ち着けば、限定復活やリニューアル再販といった展開も十分にあり得るでしょう。
代わりになる商品・購入方法
「もう一度あの味を楽しみたい」という方に向けて、いくつかの選択肢を紹介します。
- まつや公式オンラインショップを確認
一部の商品は在庫限りで販売中です。最新の販売情報は公式サイトが最も確実です。 - Amazon・楽天市場で探す
出品者在庫分であれば、200gパックなどが購入できる場合があります。価格変動には注意しましょう。 - 地元の道の駅・物産展
石川県や北陸地方では、地域限定販売が続いているケースもあります。旅行時にチェックするのもおすすめです。 - 加賀みそ鍋のもとを試す
旧「とり野菜みそ」の味を継承した新ブランドといわれており、同じようなコクと深みのある味わいを楽しめます。
消費者としてできること
長年親しまれてきたロングセラーが終売になるのは残念ですが、食品メーカーにとって継続は簡単ではありません。原料価格の上昇、需要変化、労働力不足など、複数の課題が重なる中で、企業が持続可能な体制を維持するための判断でもあります。
ファンとしてできることは、公式の動きを注視しつつ、再販があれば積極的に購入・応援すること。SNSやレビューで「また食べたい」「復活してほしい」という声を届けることも、メーカーの判断に影響を与えるかもしれません。
とり野菜みそ販売終了のまとめ
・販売終了・取扱終了は2022年末〜2025年にかけて段階的に実施
・理由は原材料費の高騰、需要変化、ブランド再編、流通体制の見直しなどが複合的に影響
・一部商品は在庫限りで購入可能
・新ブランド「加賀みそ鍋のもと」が後継の位置づけ
・現時点で再販の公式発表はなし
とり野菜みそは、石川県の食文化を象徴する存在として多くの人に愛されてきました。販売終了というニュースには寂しさを感じますが、その味や記憶は今も多くの家庭に残っています。もしまた再び店頭に並ぶ日が来たら、きっと多くの人が手に取ることでしょう。
